ロルフィングとEBM(Evidenced-Based Medicine, 根拠に基づく医療)-頚椎症-

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photo : by Kevin M : license

近年、益々注目を浴びている「筋膜」。
ロルフィングの創始者アイダ・ロルフ氏は、すでに20世紀中頃から膜組織(筋膜)が体に及ぼす影響に対しての探求を始めていました。
そして、細胞や筋肉、骨や内臓を取り巻いているこの膜組織(筋膜)のバランスが、姿勢や身体の使い方に深く関わり、心や精神といった観点にも影響を与えることを見出しました。

ロルフィングにおける研究データ

前回に引き続き、今回はロルフィングと頚部症状との関連性を研究データから捉えます。
ロルフィング10セッション前後においての、痛みと頚の可動域がどのように変化しているのかという内容です。
Rolfing structural integration treatment of cervical spine dysfunction.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19524847

方法:
Retrospective study(後ろ向き研究)と呼ばれる、過去の症例に基づいて調査整理する方法を用いて行われました。
ロルフィング10セッションを完了した727件の過去の症例から、31人の症例を抽出しています。
10セッション前後において、痛みの程度と首の可動域を評価の基準としています。
痛みに関しては、0〜10のスケールにて評価されています。(0が痛みなし、10が一番強い痛みの状態を表します。)

結果:
痛みスケールの変化

 

ロルフィングセッション前

ロルフィングセッション後

痛みが最も少ない時

1.6

0.6

痛みが最も強い時

8.0

4.9

現在の痛みレベル

3.1

1.1

頚の可動域の改善

 

ロルフィングセッション前

ロルフィングセッション後

左へ回旋

52°

65°

右へ回旋

51°

64°

左へ側屈

25°

33°

右へ側屈

22°

29°

後ろへ反る

72°

77°

前へ曲げる

39°

44°

 

考察:

727人の過去の症例から、無作為に抽出した31名中24名(77%)がロルフィングセッション前に、既に何らかの代替療法を受けていました。
代替療法を受けていたにも関わらず、慢性症状としての頚部への痛みやコリが続いていたために、ロルフィングを選択したのでしょう。

結果として、痛みのレベルが確実に軽減しているのが、特徴的な結果として明らかにされました。

頚部症状は特に、単純な筋肉のみに対するアプローチでは効果が限定的であることが少なくありません。

ロルフィングによる筋膜連鎖を考慮した観点から身体を立体的に捉えることと、動きの観点から身体の使い方を見直すことにより、痛みが改善されたのでしょう。

当院での位置付け:頚椎症におけるロルフィング

今回ご紹介した研究は、ロルフィングにおいて痛みと可動域の改善が見られるのかの2点を調査したものです。
頚椎症の実際においては痛みに加えて、肩や腕や前腕や手に、しびれや違和感などの頚部神経由来の症状が加わってくることがよく見られます。
これらの頚部神経症状に対しては、鍼灸施術を中心に行うことにより効果を最大限に出せることが、当院において体系化できています。

また、頚椎症の主たる誘因である頚のアライメントの乱れの原因が、手根骨(手の中の骨)や前腕骨間膜(2本の腕の骨の間にある膜)にある場合や、横隔膜の固さや足底筋膜の過緊張にある場合などが少なからずあります。

そして、しびれや違和感といった神経症状を鍼灸施術によりしっかりと緩和した後にも、その原因の一つである日々の身体の使い方や姿勢を見直さないと、再発することにもなりかねません。

頚椎症における当院のロルフィングの位置付けとしては、①アライメントの乱れの原因の把握、②身体の使い方や姿勢の改善、これらに対するアプローチの際に特に効果的に活用しています。

まとめ

私がロルフィングに初めて出会ったきっかけは、ロンドンの書店で見た筋膜のラインがあまりにも経絡の流れにそっくりだったから、というのは今でも感慨深い思い出として、鮮明に残っています。
筋膜のラインと経絡の走行は、89%もの相関性があると言われているのも納得です。

ただこの二つは表面のカタチ(ライン・走行)は瓜二つですが、依って立つコンセプトや哲学は似て非なるものです。

頚椎症へのアプローチにおいても、ロルフィングと鍼灸のお互いの長所を最大限活かし合えるよう、体系化し日々施術を行っております。