ヒトが重力に反応するとき -Pre-movement2-

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前回は重力に対する自然な反応としてのPre-movementを紹介しました。
腕を上げる際に重力とのバランスを保つため、一番初めにふくらはぎの筋肉が収縮するというものです。
今回は前回に引き続き、立位でのPre-movementの調整作用を担うふくらはぎの筋肉を、どのようにセッションで応用しているのかをご紹介します。

人間の体重の2/3は頭部-上肢-体幹という上半身にあり、そこは足から見て身長の高さの2/3に当たる部分にあると言われています。
つまり2/3以上の重さが身長の2/3上方に集まっていることになり、立位時には特に不安定な身体バランスの元でバランスを保っていることになります。
この不安定なバランスを足底という少ない面で支えるために、体の傾きは常にふくらはぎへの負荷へと反映されます。
また、立位時で腕を動かすことによる、上半身の重心の移動も見逃せません。
不均衡な物体の動き出しを支える機能をも、ふくらはぎの筋肉は担っています。
そのため、ふくらはぎに慢性的な筋緊張を感じる人の原因は立位バランスにあることが少なくありません。
体全体のバランスを考慮しながら膝から下を見ると、体が前に傾いている人は僅かに傾いた体を支えるために、ふくらはぎが常に緊張を伴い上体を倒れないようにアンカーしているのが確認されます。

ロルフィングのセッションの中で、座位や特に立位時に行う重力下でのワークがStructure(身体の構造)、Coordination(身体の使い方)、Perception(現象の見え方)とMeaning(物事の捉え方)を再認識するために役立ちます。
一例を上げますと、立位時にはトラッキングといわれるワークを行うことがあります。
ふくらはぎの膜や足の関節に対してのアプローチを加えながら、膝の曲げ伸ばしを行っていただきます。
ただ曲げ伸ばしを行うのではなく、視覚の使い方や周辺の空間の認識の仕方(Perception)に焦点を当てたり、首や胸骨などの使い方(Coordination)に焦点を当てたりします。
トラッキングの感覚としては、ダイレクトに膜や関節へアプローチしている中で動くことによる、足の裏の接地感覚の変化をまずは感じます。
その後、立位時の腰部の筋緊張の緩和や、頭が上方へ伸び上がっていくような方向性を感じたり、視界の広がりを感じられたりと、それぞれが様々な気付きへとつながっていきます。

ロルフィングでは、姿勢とはSCPMの集合体であると考えており、Pre-movementもそれに関わる大切な要素となります。
姿勢とは、身体の使い方や感覚の使い方、現象の捉え方の長年の反映の結果であるとも言えます。
セッションの中で得られる変化を認知し、その感覚を日常生活の中で実践していただき、生活の中に適応させていく主体的な関わりが重要になります。
これまで培ってきた身体イメージを見直していくためには、姿勢とは単純なアライメントに由来するものではなく、様々な感覚の総和の上に成り立っているのだ、という気付きから始めることだと考えています。