ロルフィングセッション3:上半身と下半身 −ユニットを感じる−

骸骨画像着色有り
photo : Walking skeleton : license

Nさんのセッション3を行いましたので、経過をご報告したいと思います。

セッション2の直後はそれ程大きな変化を感じなかったそうですが、日を追うごとに足~骨盤の繋がりを感じるようになり、骨盤部近くの足の付け根のあたりから歩いているように感じ始めたということでした。
またセッション1の前に、歩く時に手が上手く使えていない感じがするとおっしゃっていたのが、骨盤の付け根からダイナミックに動き始めたことにより、歩行時に手が自然と振れるようになってきたということでした。
「セッションが終わってから、徐々に良い変化が増幅していくような感じは初めてでとても不思議でした」という感想を頂きました。

 

上半身の中の胸郭

横向きで行うセッション3は、上半身と下半身のユニットしての繋がりを活性化するセッションとなります。

まずはセッション1でも扱った胸郭を、横向きのポジションによりアプローチしていきます。この時に重要になるのが、前鋸筋という筋肉です。(下図参照)
この前鋸筋を中心として、腕と胸郭を繋いでいきます。

筋肉単体で人間の動きを考えていくのは、効果的な方法論ではないと思います。
なぜなら何かの動きを行おうと意図した時に、ある筋肉のみが働くということはありえないからです。
動きというのは筋肉単体の収縮ではなく、各部が連鎖しあうという自然な動きの本質を考慮しなければなりません。
少なくとも部位と部位(ある筋肉とある筋肉)を繋げたユニット単位で動きを捉えていく必要があります。
上半身の動きをユニットして捉えるのに前鋸筋はとても重要な筋肉であり、前鋸筋を通して、腕と胸郭、胸郭と頭頚部を繋いでいきます。

前鋸筋の図
前鋸筋 : Wikimedia Commons

 

下半身の中の骨盤

次に、セッション2で扱った足~脚を骨盤部と繋いでいきます。
足~脚と骨盤部の繋がりを活性化させていく際に、特に腸脛靭帯~腓骨(すねの外側の骨)を中心として下肢のバランスを整えます。下半身の動きを側面からユニットして捉えるのに、腸脛靭帯~腓骨はまるで前後を繋ぐバランサーの様な役目をしています。
下半身の前と後ろの動きを側面からまとめることにより、最終的には骨盤を核としたユニットして、下肢の動きを整えることに繋がります。

 

上半身と下半身の統合

胸郭を中心とした上半身、骨盤を中心とした下半身を、身体という一つのユニットに統合させます。

ここで重要となるのが、腰方形筋という筋肉です。(下図参照)
この腰方形筋を中心として、上半身と下半身が一つのユニットとして連動するような繋がりを作っていきます。

Nさんの場合は左右差が顕著にあり、右半身は繋がりを持ちスムーズな連動性があるのですが、左半身は上半身と下半身の連結がスムーズではありませんでした。腰方形筋や腸骨筋という骨盤内部の筋肉の癒着が、上半身と下半身のユニットの連動性を分断する原因となっていました。

前回のセッション2でご紹介したAMP(Active Movement Participation、施術に合わせて受け手の方にもゆっくり動いていただく)を行いながら、上半身と下半身の連動性を高めていきます。

その時の施術者の手の感覚としては、最初は筋肉という塊単体だけが存在していたものから、パンの生地の様な柔らかさが生じ始め、徐々に流れのあるしなやかさを感じ始めます。この柔らかさの感覚は、筋肉の癒着がほどけた、というシグナルであることを多く経験しています。

そんな感覚を私が感じ始めていると、程なくしてNさんが母指球(足の親指の裏)と骨盤が繋がって動いているような感覚を感じ始めたとおっしゃいました。

腰方形筋の図
腰方形筋 : Wikimedia Commons

 

ユニットとしての身体

「ユニットとしての身体の繋がりを初めて感じることができた。」
これがセッションが終わった後のNさんの第一声でした。

ロルフィングでは、セッション1~3でSleeve(スリーブ、コーヒー屋の紙カップの外側に巻かれるものもそう呼ばれますね) という身体の外側の関わり合いに対してアプローチします。

その中でもセッション3はSleeveの結びのセッションとなります。多くの方がこれまでとは異なる感覚や肯定的な変化を感じ始めます。
それまでバラバラに動いていた身体が、有機的な連動性を持って繋がり、動くことができるという感覚です。

また、セッション3の領域は、東洋医学的には胆経といわれる部分と完全に合致します。
胆経は「枢」という機能を有し、「枢」とは「くるる」または「とぼそ」と言われ、どちらも昔の扉の動きの要になるような部分をさしていました。
これは陰と陽の間の境界に関わる部分であり、ロルフィングでセッション1(東洋医学で言うところの陽)とセッション2(同じく陰)をまとめるセッション3(同じく境界)は正に「動きの要」を整えていることと重なります。

このように、ロルフィングと東洋医学という異なるアプローチであっても、人間の身体に対して共通したエッセンスを見出しているというのは、とても興味深いことだと思います。

 

次回からのセッションではCoreと呼ばれるより内側の部位・空間へのアプローチとなります。
外側を整えることによって初めて内側にも効果的にアプローチできる、とロルフィングでは考えられています。
Nさんの場合、バランスよくSleeveである外側を整えることができましたので、次回以降のセッションもとても有意義なものになると感じております。