バレエダンサーのためのロルフィングセッション

Stage Left
photo : Stage Left : license

 

幼少期からクラシックバレエを習ってきたAさん。
途中中断していた時期もありましたが、6ヶ月間に渡るロルフィング10セッションを終え、先日無事にバレエの発表会を終えることができました。
10年ぶりの発表会を大きな目標に、どのようにロルフィングのセッションを進めていったのかをご紹介します。

改善したいポイント

お話を伺うと、お悩みは大きく分けて以下の2つに集約されました。

『パッセなど片脚立ちのポジションが安定しない』
『アン・オーなどのポジション(手を上に上げる)時に肩が上がってしまう』

ballet lesson
photo : Meredith : license

片脚立ちが苦手

1、股関節

Aさんは「お尻を締める」「お尻をしまう」という言葉で股関節周りの身体の使い方を整理していました。
実際に動きを見ると、股関節前側に過剰な緊張があり、この部分のつまりを取ろうとお尻で更に動きを代償するというように、前後のバランスの落とし所を見つけるのが難しくなっていました。

このような場合、一度、股関節やお尻周りで調整することから離れて、他の部分から動きを見直す必要があります。

2、足〜お尻

まずは足の裏からの筋膜連鎖による骨盤のサポートが上手く行えているのかをチェックしました。
具体的には内側アーチ、外側アーチ、横アーチそれぞれの機能性を確認します。
Aさんの場合は、短母趾屈筋などの内側アーチに関わる部分の働きが落ちていたため、内転筋の機能が低下し、下肢からの骨盤へのサポートが十分に得られていませんでした。

3、手〜お腹

次に、お腹や体幹でしっかりと体を引き上げられているのかをチェックしました。
お腹や体幹の安定化に体側や背中や腹筋群の活性化は欠かせません。
この部位の活性化のスイッチの一つが、実は手指にあるのです。

アン・バー、アンナバン、アン・オー、アラセゴン、etcなどは、腕をきれいに見せるためだけにあるのではなく、手指をしっかりと意識することは、上半身を使い骨盤や下肢を引き上げるスイッチの役割があるのです。
何気なく、外見だけを真似てポジションを取っていると、上半身のスイッチとしての指が上手く機能していないことが多く、骨盤や脚を引き上げることができません。
「あばらを締めて」「肋骨開かないで」のアドバイスを日頃からよく受けているということにも現れている様に、Aさんの場合は広背筋や前鋸筋や腹斜筋が十分に機能しておらず、胸郭を介して股関節やお尻を上手く引き上げることができていませんでした。
これは手指のスイッチを上手く使えていなかったことにも起因していました。

4、骨盤を立てる

足からのサポートを見直し、手指のスイッチを入れて上半身を機能させ、股関節やお尻の引き上げを連動させた上で、改めて股関節やお尻の使い方に着目しました。

当初、股関節やお尻の動きにのみフォーカスしていた時は、「お尻を締める」「お尻をしまう」意識が中心になっていましたが、セッションが進むにつれ「お尻を締める」のではなく、「骨盤を立てる」と、股関節周りの身体の使い方に関する言葉が修正されました。
Aさんが目指す動きとこれまでのAさんの身体の使い方をみると、「お尻を締める」というこれまでの言葉の使い方への集約が、求める動きに関して機能不全に陥っていた証拠です。

ロルフィングのセッションの中で見直した連鎖の感覚の再修得を行うためには、新たな言葉によって動きを捉え直す必要があります。

アン・オーで肩が上がってしまう

アン・オーのポジションで肩が上がることにも取り組みました。
このポジションで肩が上がる原因は多岐に渡ります。
Aさんの場合は、腕と腹筋群をどう協調させるのかという問題でした。
腹筋群の中でも特に臍(ヘソ)から下の腹横筋や腹斜筋の下降線維が意識できていませんでした。
腹筋群とは言うまでもなく、体の安定には欠かせない筋肉ですが、線維を細かく見ていくと、上行、下降、横行、斜行というように様々な方向に走っていることにより特徴付けられます。
4方向全てが機能的に使えて初めて体の安定が図れ、目的とする動きのために上半身を機能させることができます。
Aさんの場合はアン・オーで腕を上げるときに、下降線維を上手く使い上肢を骨盤に引き止めておくように使う必要がありました。
また、お尻の使い方のところでも見直していた、手指のスイッチをさぼらないように意識付けることも必要でした。

 

10セッションを終えてのご感想

Q1. ロルフィングを受けるに当たっての目的は何でしたか?
長年続けてきたバレエでのパフォーマンス向上を目的に、受診しました。 というのも、最近、苦手な動きやバランスのとりづらさの原因は身体の使い方に問題があるからでは?と思っていた矢先に、雑誌Veggyに掲載されていた服部先生のロルフィングの記事に出会い、これはまさに自分が求めていたことではないかと思ったのです。 苦手部分を克服し、より、動きの質を高めたいのと同時に、10年ぶりにクラシックバレエの発表会に出ることになったため、その前に10セッション受けて変化を感じたいと思いました。

Q2. セッションを進めていく中での印象的な変化や気づきはありましたか?
セッション毎に身体の細部を認識する新しい感覚に出会えました。 たとえば、名前を知っていて「何となくこの辺かな?」という骨の位置を、実際に体の中に感じることができ、「ここを意識するのか!」という発見がありました。 どこの意識を活性化させればよいか、という指示が的確で、言われた通りに動くだけで、今までにない『気持ちいい、楽な』感覚を実感します。 意識の改革、ともいえる感じなので、これまで受けてきた、カイロプラクティックや整体と違い、施術後、時間が経ってからも自分で探すことができるのがとてもありがたかったです。

Q3. 10セッションはどのような体験でしたか?
毎回が新しい発見で、10回はそれの連続です。2、3回目で何となく感じられたところが、後半に「これか!」と明確なものになっていきました。 自分の場合、今まで柔軟性や可動域を広げることに一生懸命になっていましたが、実は、使えていない筋肉がいっぱいあったことに気づかされ、自分にとって必要な訓練がわかりました。 毎回、様々なアプローチで骨や筋肉を目覚めさせるようなセッションなので、その後のバレエのレッスンではより動きやすく、首や腕、脚が数cm遠くに伸びる感覚がありました。 セッションでの気づきを頭に置きながら迎えた発表会本番も、自分のバレエ人生の中で、一番大きく動けた気がします。 ただ、10回終えてみて思うのは、ようやく入口に立てたな、ということ。まだまだ可能性を広げていきたいです。

Q4. ロルフィングを知らない人にロルフィングを説明するとしたら、どのように表現しますか?「あなたにとってのロルフィング」とは?
ロルフィングとは、「身体をバランスよく整えて、痛みや不快な重さのない楽な状態に近づけていくもの」「必要なところはほぐし、伸ばし、鍛え(意識させ)余計な負荷から解き放つもの」と表現したいです。 打ち込むスポーツやパフォーマンスの為だけでなく、日常生活を心地好く送るためにも施術を体験してもらいたい。 また、私にとってのロルフィングは、自分の可能性をどんどん広げてくれるものです。 今までできなかったことができるようになったり、普段の姿勢が変わることによって、気持ちや体内の状態も良くなるように感じます。

Q5. ロルファー服部への感想、御意見などあればお聞かせください。
初めて訪問したときに、見ただけですぐ、改善したらよい部分に気付いて頂き、それが本当に自分に必要なポイントだったことにとても驚きました。 まるで占い師?!とも思ってしまうほど、心と身体の状態等いろんなことをわかってもらえるのは、長年の経験とたくさんの知恵をお持ちだからこそ、だと思います。とても安心感がありました。 施術前の脈診などでは、都度、自分の状態にあった施術を行ってくださり、セッションの効果に加え、心身の調子がよくなりました。 また、施術中にいろいろなことを聞けるのが、セッションを受けるのと同じくらい楽しみでありました。 どうやったら意識しやすいか、わかりやすいかということを自分の体も使いながら、とても真摯に考えてくださることに感動で、毎回頭が上がらない思いで、尊敬しています。

と、恐縮してしまうほどのご感想をいただきました。

 

まとめ

バレエでの動きの改善やより質の高い演技を行うために必要なことは、一度該当部位から離れて動きを全体の筋膜連鎖の中で捉え直すことだと考えています。
痛みや違和感などの症状の改善には、局所へのアプローチを行うことはとても効果的ですが、動きの改善に関しては該当局所に拘りすぎると全体性を見失いかねません。
全体性の中で、どのように体を効果的に使っていくのかを体感し、体感したイメージをしっかりと自分の言葉で捉え直すことが重要になります。
身体の使い方の再学習とは、これまで知得体得してきたイメージや感覚、そこに付随する言葉の使い方の再修得であると言えます。
ロルフィングのコンセプトの中で、バレエダンサーの方の動きをどのように高めていけるかをこれからも追求していきたいと思います。