コリや痛みが改善しないのは「睡眠負債」が原因かもしれません。

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今回は最近の症例2例のご紹介をさせていただきます。

環境の変化が腰や背中の痛みをもたらす? 症例1

1ヵ月に1回メンテナンスに来られているKさん。
いつもは疲労感と首から肩にかけてのコリ感をメインに施術を行っているKさんですが、今回はひどく体調を崩されての来院となりました。
お話を伺うと、1月から職場が変わったこともあり、新しい環境に慣れるまでの気疲れによる睡眠の質の低下が強く関係しているようです。
あまり寝た気がせず、頭が常に忙しい感じがするとの訴えからも、1日の疲労を充分に回復することができていないのでしょう。
また、通勤時間が増えたことも、疲労の蓄積の大きな要因になっているようです。

東洋医学の観点からは、肝血虚腎陰虚
慣れない環境に適応するまでの気疲れ、新しい仕事を覚える過程におけるPCでの目の酷使、これらは全て肝気と肝血を消耗してしまう大きな原因となります。
頭が常に忙しい感じがするとの訴えは、本来、活動のための陽のエネルギーから休息のための陰のエネルギーに入れ替わる夜の時間帯にも、まだ陽のエネルギーが頭の中でグルグルと動いている状態を現しています。
これらのアンバランスにより、寝た気がしないという睡眠の質の低下が引き起こされ、疲労を回復するために腎陰を補うことができなくなります。

話が長くなりますが要約すると、肝血虚とは、書いて字のごとく肝の血が足りない状態です。
肝の血は特に目や筋肉を滋養しています。
そのため、肝血虚(血の不足)の状態になると、疲れ目やドライアイ、筋肉の痙攣やコリ感を顕著に感じる傾向となります。

そして、腎陰虚とは、腎精と言われる両親から受け継いだエネルギーの中でも、腎陰と言われる体を潤す水分、血液などの栄養物質が一時的に不足した状態を指します。
腎陰は腰や脳を滋養しており、腎陰虚の状態になると、腰の鈍痛や思考力の低下などが生じます。

肝血と腎陰は共に、体を潤し滋養する陰の性質を持つため、虚(少ない)の状態になってしまうと、陽のエネルギーの暴走を抑えることができなくなります。
陽のエネルギーの暴走が起こっている部位には、炎症が発生しやすくなり、また全ての機能が亢進してしまうため疲れていても夜眠れない、などの交感神経過多の状態が起こってしまいます。

これらの結果として、今回の首肩から背中にかけての強いコリ感が肝血虚により、腰の鈍痛は腎陰虚により引き起こされたと考えます。

そして、解剖学的観点からみても、新しい職場環境への適応過程におけるストレスに端を発していることは明らかです。
特にストレス増大期においては、一時的に仙腸関節は固まってしまいます。
仙腸関節とは体を下支えする土台であり、脳脊髄液を介し、視床下部や下垂体とも深く関わっています。
仙骨の可動性を取り戻すことは、交感神経を抑制し、副腎の機能を正常化することにより、腰の鈍痛の改善や背部の筋緊張の緩和を導くことが可能となります。

今回の施術は主に、鍼灸治療による局所の筋緊張緩和、肝と腎のバランスを整えるための手足の穴を用いた全身治療、クラニオセイクラルの観点より自律神経を整える手技を頭に・鍼を仙骨に、これらを総合して行いました。
後日、「あれから調子が随分良くなり、もうひと踏ん張り頑張っていこうという気力が湧いてきました」とのご連絡をいただきました。

 

頚椎症と診断されて 症例2

4ヶ月ほど前から、頚から肩にかけてのしびれに悩まされてきたSさん。
整形外科を受診し、頚椎症との診断を受けしばらくはリハビリに通うも、中々改善が見られなかったため、2ヶ月前から当院にお越しいただいていました。

当初の主訴は右側の首から肩にかけてのしびれ、時折右手指まで違和感を感じるとのことでした。
自覚している原因としては、半年くらい前から車の運転が増えたことにより、首への負担がかかったのかもしれないと考えておられました。

体を詳しく拝見してみると、舌が全体的に赤く、特に舌先に赤みが強く出ていました。
舌先の赤さは、身体上部に熱(気)の偏りがあることを示し、この場合も睡眠が十分に取れていない可能性を示唆します。
その旨を伺ってみると、車の運転が増え始めたころは特に仕事での心配がある時期であったため、不安感が常に頭から離れない時期でもあったようでした。

運転による頚への負担増大と身体上部への極端な熱の偏りがあったことが、頚椎神経根部の炎症に繋がったと考察しました。

東洋医学の観点より、身体上部にある過剰な熱を流すための手足への針を行い、頚椎症による神経の炎症を抑えるような針を行いました。

当院にて積極的に取り組んでいる頚椎症の施術ですが、頚椎症におけるしびれの症状改善が見られるまで3週間〜1ヶ月程のタイムラグを見ています。
これは神経の可塑性と呼ばれる体の仕組みに関係があり、このタイムラグがあるといのは、適切な施術を行えば大抵の頚椎神経根症は3週間〜1か月で改善するということを意味しています。

Sさんの場合も、これまで4回の施術約1ヶ月程にて、時折あった右手指の違和感はなくなり、頚から肩にかけてのしれびはほぼ改善されました。

また、日頃の養生として、睡眠を常にしっかりと取っていただくことと同時に、睡眠の質の改善にも配慮していただくため、寝る30分前のPCとスマートフォンを極力使わないように意識していただきました。

 

睡眠負債にご注意

「睡眠負債」という言葉が世間を賑わしているように、Kさん、Sさん、とも症状の発生にはストレスと睡眠が深く関わっています。
現代人にとって睡眠にまつわる問題は死活問題であり、統計によると人口の30%が不眠に悩まされているという報告もあるようです。

東洋医学においては、精神的ストレスによる睡眠の質の低下を「アタマの疲れ」と捉え、体を積極的に動かすことによる「カラダの疲れ」を生活に中に取り入れることにより、睡眠の改善を図ってきました。
症状に対する施術効果を最大限引き出すためにも、良質な睡眠は欠かせないからです。

睡眠領域、特に人間の眠りはまだまだ分かっていないことだらけ。
そして1つの因子で説明することが難しく、実際はあらゆる因子(ストレス、環境、遺伝子、生活習慣など)が関連しています。

当たり前の毎日の生活を見直すことは、そう簡単ではありません。
ただ、痛みやしびれ、コリ感や張り感が強くなってきているのは、やはり体からのシグナルです。

ストレスにまつわる睡眠負債が引き起こす様々な症状にも当院は積極的に取り組んでおりますので、何らかの体からのシグナルをキャッチした際には、早目のご来院をオススメいたします。